現役大学2年生。ただの「私」から、情報発信。読書から、教養をシェアしていきます。

読書で生きていく

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「『原因と結果』の経済学 データから真実を見抜く思考法」読んでみた

こんにちは!「読書で生きていく」です。

 今回は、正しい因果関係を学ぶことができる、 中室牧子 津川友介 著  「原因と結果」の経済学 データから真実を見抜く思考法 を、読んでみました。

 

「原因と結果」の経済学 データから真実を見抜く思考法

オススメ度:★★★★★

 

~目次~

 

はじめに、根拠のない痛切に騙されないために 「因果推論」の根底にある考え方、メタボ健診を受けていれば長生きできるのか 因果推論の理想形「ランダム化比較実験」、男性医師は女性医師より優れているのか たまたま起きた実験のような状況を利用する「自然実験」、認可保育園を増やせば母親は就業するのか 「トレンド」を取り除く「差の差分析」、テレビを見せると子供の学力は下がるのか 第3の変数を利用する「操作変数法」、勉強ができる友人と付き合うと学力は上がるのか 「ジャンプ」に注目する「回帰不連続デザイン」、「偏差値の高い大学に行けば収入は上がるのか」 似たもの同士の組み合わせを作る「マッチング法」、ありもののデータを分析しやすい「回帰分析」です。

 

~大まかなあらすじ~

 

因果関係と相関関係は似ているが、違いがある。また、相関関係の中にも違いがある。よくある通説には、因果関係がないにも関わらず、主張されているものがある。因果関係を調べるために様々な手法がある。それぞれの手法の説明と、長所・短所が述べられているが、それだけでなく、実例が用いられている。

 

~感想~

 

大学と収入との関係や、性別の違いによる医師の優劣などは、学歴フィルター、フェミニズムなど、現代の社会現象と密接に結びついていると思うし、人生を左右しかねない問題なので、これらの因果関係を読み解くというのは、非常に興味深いと思いました。また、RCTや自然実験などの手法が実際にどのように使われるのか、ケースバイケースで学ぶことができました。

「美しい暦のことば」読んでみた

こんにちは!「読書で生きていく」です。

今回は、季語を通して日本の自然の趣を伝えてくれる、 山下景子 著 美しい暦のことば を、読んでみました。

 

美しい暦のことば
オススメ度:★★★★★

 

~目次~

 

初春、仲春、晩春、初夏、仲夏、晩夏、初秋、仲秋、晩秋、初冬、仲冬、晩冬 です。

 

~大まかなあらすじ~

 

季節を二十四節気と七十二候で分けて、それぞれにちなんだ季節のようすや、四季のようすが説明されている。

 

~感想~

 

二十四節気にまつわる行事はたくさんありますが、七十二候は、その時期の自然のようすを細かく伝えてくれるものです。刻一刻と変わりゆく自然の姿を、その時期に限って、正確に描写していて、見たり聞いたりしただけで、その時期のようすを何となく想像させてくれる、美しい言葉だと思いました。今よりも自然をずっと身近に感じたはずの昔の人々が作った言葉には、私たちが忘れてしまった自然への鋭利な視点があり、趣深いものがあります。和歌の良さも、これに通ずる部分があるからではないか?とも思いました。

「経済数学入門の入門」読んでみた

こんにちは!「読書で生きていく」です。
今回は、経済数学の道のりを、大局的に眺めることができる、田中久捻 著 経済数学入門の入門 を、読んでみました。

経済学入門の入門
オススメ度:★★★★★

後半の数式を無視すれば、経済を少しでも触ったことがある方なら、サクッと読めると思います。
内容は150ページに満たないほど薄く、あくまで「入門の入門」書なので、入門として「改訂版 経済学で出る数学 高校数学からきちんと攻める」(問題集付き)や、「現代経済学の数学基礎(上・下)」、本格的なテキストとして「経済数学教室(全9巻)」(ミクロ経済学マクロ経済学:第3・4巻「線形代数と位相」、現代的なマクロ経済学:第7・8巻「ダイナミック・システム」など巻ごとに読むことがオススメ)、腕立て伏せ(経済学の教科書で数学を学ぶという復習)として「経済学部は理系である!?」、西村和雄著「ミクロ経済学」、「Microeconomic Analysis(Hal R.Varian)」、「Microeconomic Theory(MWG)」、トピック別のテキストとして「新微分方程式対話 新版」、「ラング線形代数学(上・下)」:線形代数(余因子展開・クラメールの公式よりも一次独立・基底・部分空間・固有空間、固有ベクトル・対角化←下巻)、丸山徹著「経済数学」:位相集合論(位相幾何学よりも距離空間・開集合・閉集合・コンパクト集合・凸集合・連続写像線形代数ユークリッド空間、なるべく速足で駆け抜けることがオススメ)、「経済数学教室(第7・8巻)」、「Recursive Methods in Economic Dynamics」:最適制御や動的計画法などの動学的最適化理論、経済学と数学の歴史として「入門経済思想史 世俗の思想家たち」、「近世数学史談」、「解析概論」、「ヒルベルト代数学の巨峰」、プログラミング言語としてMatlab:動的計画法、Stata、Eviews、R:計量経済学LaTeX:数学的文書作成 などを学ぶ必要があります。

〜あらすじ〜

①経済学と数学〜なぜ数学を学ぶのか〜

今と昔の経済学の大きな違いは、理論分析か実証分析か、ということだ。学術雑誌に掲載された経済学の論文のタイトルには、両者の間に大きな差が見られるが、方法論に注目しよう。昔は、理論的な価値観に従って「ガチガチな」理論分析・展開をしていたが、今は、現実問題を理論的に証明する実証分析の方向へ向かった。そういった今の経済学スタイルを、計量経済学ともいう。また、昔は経済学に数学は不要である論を唱える学生ばかりでなく、教授も沢山いたが、今は数学は、経済学に必須の学問とも言われるようになった。実証分析のおかげである。
数学を「積極的に」用いて研究を行う経済学の一分野のことを数理経済学といい、代表者にクールノーがいる。彼は、需要関数や費用関数の他、約百年後に発表されたゲーム理論の内容を先取りする研究(分析)をも行っていた。彼の著書を読み、レオン・ワルラス一般均衡理論完全競争市場均衡の概念を分析した。その後、サミュエルソンにより制約付き最適化問題に加えて、経済学の全ての定理は検証可能であるべきという思想である顕示選好理論を発表し、新古典派的総合、国際貿易理論でも活躍。以上3名によって、数理経済学の道は切り開かれたのである。

②一次関数~市場を数式で表現する~

数学、特に関数は、複雑な状況を簡潔に記述できるので、経済学で用いられる。原因に当たる変数を説明変数、結果に当たる量を被説明変数という。関数の記述による仮定はあくまで近似値で、説明変数として明示的に含まれない様々な変数は誤差項としてまとめられてしまう。消費者家計と、生産者(を生産する≒企業ともいう)による需要量供給量の関係を、関数を用いて単純化して記述するが、実証的であるがために、数式を立てるだけでなく、自分の言葉で説明できるようにならなくてはならない。需要曲線供給曲線では、価格はつねにタテ軸に、数量は必ずヨコ軸に取る

③二次関数~満腹と疲労

便益とは、その財を消費して得られる満足度のことで、財の消費量と便益を対応させる便益関数から便益曲線を描く。財の生産量と、その生産に要する総費用を対応させる費用関数から費用曲線を描く。生産量0で発生する費用を固定費用、生産量の増加とともに上昇する費用を可変費用という。
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便益関数・曲線、費用関数・曲線は二次関数で表せる。

④関数の微分~「この瞬間の、この感じ」~

便益曲線の接線に沿って限界便益限界費用を求める(=微分)が、二次関数なので、限界逓減・逓増であることに注意する。消費量と限界便益を対応させる関数を限界便益関数、生産量と限界費用を対応させる関数を限界費用関数という。「限界」とは、「これ以上細かく分けることができない」という意味での限界。味見などに応用されている。限界量とは、利き酒でいうところの、確実に味がわかり、しかし酔っぱらわずにすむ最低限の日本酒の量のこと。限界の概念を経済学に取り入れたレオン・ワルラスを筆頭とするウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ、カール・メンガーを、限界三人衆と呼び、彼らの偉業を限界革命という。限界は瞬間変化率にほぼ等しく、限界便益関数限界費用関数は、lim(微分)で求められる。「限りなく0に近いけれども0ではない微小な量」という、ニュートン微積分に残された、数学にあるまじき曖昧さを回避するために、エコール・ポリテクニークでは、デルタ・イプシロン論法が考案された。デルタ・イプシロン論法では、「0ではないけれども限りなく0に近づく数列」を導入する。限界量をはじめ、位相集合論(「距離」を形式化し、幾何学を考え直す)など、さまざまな概念を形式化・抽象化することで、その適用範囲を広げ、社会や経済の分析をも可能にしたのが現代数学の長所。最適な消費量・生産量を決定するには、「限界便益・(or)限界費用=価格」となる時点、つまり、買うも買わないも「どっちでもいい」、経済学でいうところの「無差別である」点を探せばよい。価格が上がったときの限界便益・費用曲線は、需要・供給曲線と同じ意味を示す。
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つまり、限界便益・費用をグラフに描けば、それがそのまま需要・供給曲線に化ける。便益・費用関数を微分して限界便益・費用関数を求め、価格をを利用して、最適消費・生産量を計算で求めることもできる。

⑤関数の最大化~山の頂で考える~

局所的な最大点を極大点といい、最大点ではない。全章までの最適点は、極大点に過ぎない。極大値が最大値であるかを確かめるために、傾きが0になる点を、一階の条件から探す。極小点変曲点も傾きが0であるので、必要条件に過ぎない。純便益(=消費者余剰)=便益-支出、利潤(=生産者余剰)=・・・といった、最大化される山である目的関数を決める。「限界便益=価格」と、極大化の一階の条件(純便益を表す関数を微分して0に等しいとする)では、同じ結果が求められるので、同じものだといえる。しかし、前者では便益・消費関数の全体を知らない消費・生産者、後者は知っている者を想定してあり、価格に関しては前者の方が求めやすいという違いはある。一階の条件の応用例として、クールノーの経済モデルがある。一階の条件を満たす点が、極大点か極小点かを判定するときに二階の条件を使う。f'(x)を一階導関数、f''(x)を二階導関数といい、f''(x)<0ならば極大点であることを、二階の条件という。テイラー展開とは、「任意の関数」を高次の多項式で近似しようとするもの。f(x)をx=aでn回微分した結果を次々に足したものを、x=a周りでの、f(x)のテイラー展開という。多項式関数は、次数が多いほど多くの頂点を持つが、この頂点の位置をうまく調整すれば、近似できる、という根拠を持つ。関数の凹性(=山型)が確認できれば、極大点が極大点であるかのみならず、最大点であるかを判定できる。二階の条件が満たされているとき、凹関数になる。純便益関数と利潤関数は二階導関数が常に負なので、凹関数であり、最大点を導く。さまざまな関数をテイラー展開で近似して、二階の条件を確認すれば、凹関数であることが確かめられる。以上より、需要関数と供給関数の最適点は大域的に正しいと証明された。市場は需要と供給を一致させる。価格による一致をワルラス的価格調整という。調整は、需要と供給の一致が達成される、完全競争均衡まで続く。均衡において成立している価格・財の数量を、(完全競争)均衡価格・数量という。
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⑥多変数関数の最適化~ケーキとコーヒーの黄金比

1種類の財による便益関数から、複数の財を変数に持つ多変数関数による消費などから得られる喜びを考える。それを効用とする。同じ個人内部で一貫性をもつことが大事である。消費パターンと効用を対応させて効用関数とする。効用関数は、効用の大きさu=U(x1,・・・,xn)と表す。コブ=ダグラス型効用関数(x1^a1・ … ・xn^an)や、代替弾力性一定型効用関数((b1x1^p+…+bnxn^p)^1/p)、レオンティエフ型効用関数(min{a1x1,…,anxn})などがある。限界量だけ増加させたときの効用の増加率を限界効用といい、偏微分(他の変数を定数とする微分)で求める。変化率の極限をlimで計算するとき、ある変数による偏微分、またはある変数の限界効用という。多変数関数の最大化は、最大点ですべての偏微分の値が0になるという、一階の条件に関する式が多いだけで、一階の条件と凹性の条件を用いることは変わらない。しかし、条件の見た目があまりに複雑になるため、線形代数における行列式を使わざるを得ないことが異なる。制約付き最適化問題では、予算制約があるが、女王ディドの時代から、サミュエルソンの「経済分析の基礎」以降、ほとんどすべての問題がこれにあたる。予算制約内で効用関数の最大化をするとき、ラグランジュの未定乗数決定法を用いる。効用関数+λ×所得-支出額)。λは単位を揃えるために使う。効用関数に予算制約を糊付けしたものをラグランジュ関数という。偏微分して0にして最適解の候補を見つけることを、ラグランジュの一階の条件という。ラグランジュ関数から、すべての変数について偏微分して=0として、ラグランジュの一階の条件とする。効用関数はとても多くの変数を含むので、行列式になるが、準凹関数になるための条件を与えれば、解が最大点であることを示せる。効用関数が準凹であることを行列式で表せるとき、コブ=ダグラス型や、代替弾力性一定型は、準凹関数である。準凹性を持つ効用関数の等高線(無差別曲線)によって、極端に偏った消費の仕方より、バランスの良い組み合わせのほうが好きという準凹性の性質が分かる。予算制約下の効用関数をマーシャル型需要関数、または単に需要関数と呼ぶ。所得の影響を考えることができるのが、マーシャル型需要関数の特徴である。価格が高まれば需要も高まり、所得が増加すると需要が減るようなへそ曲がりな需要関数を持つ財をギッフェン財と呼ぶ。すべての市場が同時に均衡することを一般均衡というが、連立方程式があまりに複雑だったり、効用関数・費用関数を具体的に特定したくない場合、財が2種類以上あるとき(グラフが4次元以上)は、そもそも均衡が存在するのか、存在するとしても1つに定まるのかどうか、複数の均衡が存在した場合には最終的に経済が落ち着く先はどこなのか、という一般均衡存在・一意性・選択の問題が連鎖的に生じる。これは、ジェラルド・ドヴリューが、位相集合論(連続性を調べるための数学)を応用して、需要曲線と供給曲線がどこかで交点(不動点)を持つはずだとして、一般均衡の存在を導き出し、解決した。以上が、ミクロ経済学価格理論と呼ばれる部分の大まかな全体像である。
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マクロ経済学と差分方程式~富める国、貧しい国~

貧しい国はなぜ貧しいのか、どうすれば豊かになるのか。そのような問題を考えるのが、現代マクロ経済学の出発点である経済成長理論である。この理論の基礎は、ロバート・ソローによる(新古典派的)経済成長モデル、あるいはソロー・モデルと呼ばれる。GDP(1年間に作り出した付加価値の合計)は、技術水準労働投入量資本(道路や空港、学校や病院などをまとめたもの)によって決定される。ある最貧国では、最低限の要素によって、生産活動が行われ、市場に供給することで労働者の収入が得られる。それは消費と貯蓄に回される。貯蓄は投資に回されて、この国の技術水準や資本が増加する。人口は一定率で増えるので、生産の3要素が増加し、経済成長の好循環が始まる。逆に内戦などで資本や労働投入量がつねに破壊されてしまう状況下や、貯蓄率が低い場合、「貧困の罠」という、貧しさゆえに資本が蓄積されず、資本がないゆえに貧困に囚われる、という経済成長の停滞が起こる。ソローの経済成長モデル(ソロー・モデル)を定式化したものを差分方程式(=漸化式)という。比較的長い時間を必要とする資本への投資やGDPの集計には、差分方程式が適している。技術水準、労働投入量、資本水準を定数を用いて掛けたものをコブ=ダグラス型マクロ生産関数という。経済成長スピードが逓減して、最終的に経済成長が停止している状態を定常状態という。技術水準、貯蓄率が高く、人口成長率が低ければ豊かな定常状態に、技術水準、貯蓄率が低く、人口増加率が高ければ貧しいままで成長が停滞している定常状態にあるといえる。投資先の効用が逓減し切ると、資本蓄積の速度が低下し、次の技術革新があるまでは、経済成長は停滞する。経済が定常状態に向かうことを数式によって確認するために、差分方程式を用いる。差分方程式において、定常状態にあたるものを定常解といい、どのような初期値から出発しても定常解に収斂するとき、その定常解は大域的に安定であるといい、定常解の十分近くにある初期値からスタートしたときのみ定常解に収斂するならば、定常解は局所的に安定であるという。局所的な安定性を示すためには、定常状態周りでの一次近似法(微分計算を1回)を行う。ソローの経済成長理論は、最適成長理論に後継された。この理論では、一国の経済活動を、たった一人の代表的個人に集約する。その人は、自分の効用を最大にするために一国の消費と貯蓄をコントロールする。ソローの理論では一定とされていた貯蓄率を、人々が自分自身で決定できるように、モデルが拡張されたのである。最適成長理論には、最適制御理論という一分野が用いられる。この分野の基礎には、ポントリャーギンの最大値原理(ロケット工学の数学理論として開発されたもの)と呼ばれる大定理がある。ハミルトン関数を解くと、=0を満たす。これをポントリャーギンの最大値原理という。これを整理して、3つの条件式を得る。1つ目は資本の成長経路(資本と貯蓄によって来期の資本が決定される)を記述する、本質的にはソロー・モデルと同じ内容の式、2つ目はオイラー方程式(来期の資本と消費に基づいて今期の消費が決定される)、3つ目は横断性条件式(遠い将来において資本水準が爆発的に増加しない)である。オイラー方程式の分析には、テイラー展開線形代数における固有値などの知識が要求される。

動的計画法~失業者は関数方程式を解く~

人々が将来に対して抱く予想のことを期待と呼ぶ。マクロ経済学の政策目標では、自発的失業(「働いたら負け」)ではなく、本人が望んだわけではない非自発的失業だけが撲滅の対象である。自発的失業を分析するための数学モデルをサーチ・モデル(最適停止問題)という。自発的失業モデルはベルマン方程式によって表すことができる。失業の継続を諦めてもよいくらいに高い賃金水準を留保賃金という。これは、ファイナンス理論における意思決定と同じような数学モデルなのである。両辺に未知の変数を含む式を方程式といい、未知関数を含む式を関数方程式という。これには、ベルマン方程式、差分方程式、微分方程式などがある。ベルマン方程式を用いて最適化問題を解く方法は、動的計画法と呼ばれる。これは、物理学の分析手法を拡張したものである。経済学と物理学は、どちらの学問領域も、目的関数を最適化しつつ時間とともに変動する変数の動きを追跡することなので、自然なことといえる。経済学は逆行する時間のなかで意思決定をしているので、経済学のほうが「難しい」といえる。ベルマン方程式の右辺に適当な初期関数を代入し、出てきた結果をまた代入し、変化がなくなるまでコンピュータ上の数値計算によって延々と実行することを繰り返し代入法という。このように、マクロ経済学のモデルの多くは複雑怪奇な関数方程式で、手計算で解けるものなんて皆無なので、プログラミングの勉強もした方がよい。繰り返し計算の収束性を分析するための数学的な方法を関数解析(無限次元空間における幾何学を分析するための学問で、線形代数の上級版)という。関数列の収束を論じるには、数列の収束性を判定するためのデルタ・イプシロン論法が多用される。このように、関数解析は、微積分と線形代数が合体したような分野である。以上で1年生が学ぶ微分から大学院の修士課程で学ぶ動的計画法までを概観した。

〜感想〜

あくまで「入門の入門」なので、非常に分かりやすかったです。ただ、大学の授業でも思っていたことなのですが、特にミクロ経済学では、線形代数、行列、偏微分など、数Ⅲの分野が頻出する上に、相応の理解力(とは言っても、おそらく問題集のレベルA程度を解くうちに身に付く、勘?)を必要とされるので、個人的には、数Ⅲを自習するか、数検を取りたいと思いました。